研究概要 |
悪性腫瘍に伴う高カルシウム血症の内, 腫瘍細胞から分泌される液性因子を介するHHMは腫瘍細胞の増殖機転そのものと関連性を持つと言う点からも興味が持たれているが, 現在なおその因子については不明の点が多い. ところで, 現在までに作成されたHHMモデルはいづれも高い血中1,25(OH)_2D濃度を示すという点でHHM患者とは明らかに異なる病態を示している. そこで我々はこのような問題点を解決するための動物モデルを開発するため, ヌードマウスに維持されている217のヒト腫瘍株をヌードラットに再移植して, 11.0mg/dl以上の高カルシウム血症を示す27株を見つけ出し, これらの株の分析を行った. 高カルシウム血症を示す株は(臨床におけると同じく)扁平上皮の成分を持った株に多く, 患者とヌードラットの血清カルシウム濃度はよく相関した. これらの株の内, ヒトの子宮癌であるUCC-8-JCK株とヒトの口腔癌であるOCC-1-JCK株について宿主ヌードラットの血清カルシウム値, 血清リン値, 腎尿細管リン酸再吸収, 尿中cAMP排泄, 血清1,25(OH)_2D濃度を測定したところ, その他の成績は同じであったが, 血清1,25(OH)_2DはOCC-1-JCK株では高くUCC-8-JCK株では明らかに低いと言う結果を得た. これらの結果からUCC-8-JCK/ヌードラット系はヒトHHMの理想的なモデルになりうると考えられた. 次に, これら二つの株からラット骨芽細胞様骨肉腫細胞UMR106のcAMP産生増加作用を指標にしてPTH様活性を測定した所, 両株とも分子量が30Kの位置にピークを示したが, UCC-8-JCKはその他に25Kの位置にもピークを示した. 最近MartinらはPTH様因子遺伝子のクローニングに成功したと報告しているが, この物質は我々の30Kのピークに一致するものと考えられる. 今後25Kのピークを解析することにより, ヒトのHHMの真の病態を解明出来るものと考えられる.
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