研究概要 |
15〜18時間飢餓の成熟メスラットを対照群とし、飢餓12時間でエチオニン1g/kgを腹腔内に注入し、注入後3,6,9及び12時間のものを実験群とした。これらラットのアルデヒド灌流肝の肝細胞内に認められる脂肪顆粒に対して、リパーゼ,ホスホリパーゼ及びリポプロテンリパーゼを利用する酵素消化法、さらにpH9のクエン酸鉛液に浸漬後4%四酸化オスミウムで後固定するen bloc染色法を試み、脂肪肝発生過程を電顕細胞化学的に詳細に追求した。その成果は、6月の日米合同組織細胞化学会総会、8月の国際電顕学会及び9月の国際病理アカデミー総会で発表した。これら発表を要約すると次の通りである。対照群では、ゴルヂ領域にVLDL顆粒を認めるが、エチオニン投与3〜6時間後では、VLDL顆粒は減少し、小胞体腔内に中性脂肪と燐脂質を主成分とするリポソームが、急激にかつ多数出現する。6〜9時間後には大小の細胞質内脂肪顆粒が著増するが、これらが前記の小胞体内のリポソームから直接移行したと推定しうる電顕像をまだ認めていない。細胞質内脂肪顆粒は中性脂肪を主成分とし、界面に燐脂質の膜を認めるが二重構造を示す生体膜で包まれておらず、胞体内に分散したこれら顆粒はお互いに融合して大きくなる傾向を示す。ホスホリパーゼ消化法によってのみ電顕的に検出される小胞体腔内微小顆粒は上記実験条件下で殆んど変動せず、別に試みた肝細胞マイクロソーム画分に対する酵素消化法から、この微小顆粒は小胞体膜の消化産物で、人工的な燐脂質顆粒と推定するに至った。 次に、エチオニン注入後3時間でコルヒチン2.5mg/kgを腹腔内に注入すると、エチオニン単独注入6〜9時間後にみられる細胞質内脂肪顆粒の増数粗大化現象がそれ程顕著に発現していないことを知った。その成果の一部を4月の日本病理学会総会で発表予定である。この脂肪肝発生過程に細胞骨格傷害が関連するか否かを目下検討中である。
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