研究概要 |
ラットの胸腺原基をヌードマウスの腎被膜下に移植しておく(TGヌード)と, ほぼ正常な胸腺の形態を示す発育がみられる. このTGヌードは免疫能を獲得する. しかしながら, 早期から多発性に臓器局在性の自己免疫病が高率に発症する. 発病する臓器は, 甲状腺, 唾液腺, 胃, 副腎, 卵巣, 睾丸, 前立腺, 等である. 本年度はTGヌードの病変発症におけるエフェクターとなるリンパ球の同定をトランスファーの系で解析し, 以下の事が明らかとなった. 1.供与体に用いたTGヌード(n=95)には, 卵巣炎(95%), 甲状腺炎(70%), 胃炎(70%), 等が発症した. TGヌードの病変は, 同マウスの脾臓より得た未処理リンパ球分画を同系のヌードマウスに注射することにより, 高率にトランスファーすることができた. 病変の中で卵巣炎が最も高率にトランスファーすることができ, リンパ球5×105個以上の注射で14日後から高率(80%)に発症した. 2.TGヌードの脾細胞をThy-1.2 L3T4及びLty-2抗原に対する単抗体を用いての細胞障害試験により分画し, それぞれをヌードマウスに注射したところ, 抗Thy-1.2あるいはL3T4抗体処理によりエフェクター効果が消失した. 一方, 抗Lht-2抗体処理した細胞では高率に病変をトランスファーすることができた. 3.Flowcutometer(FACS)を用いて, TGヌードの脾細胞よりL3T4及びLyt-2抗原陽性細胞をそれぞれ選択的に回収し, ヌードマウスに注射したところ, L3T4抗原陽性細胞がエファクター細胞であることが明らかとなった. 以上より, TGヌードにおいて, 移植ラット胸腺内でラットの胸腺上皮細胞との相互作用により発育・分化したホストのTリンパ球, その中でもL3T4抗原陽性細胞んどサブセットが, 臓器局在性の自己免疫病を引き起こすエフェクターであることが明らかとなった.
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