研究概要 |
フィラリア症における感染防御免疫の機構を解析し, 有効な防御抗原を持定する目的で, マレー糸状虫マウスモデル系を確立した. マウスに100隻の感染幼虫を腹腔内感染し, 2週後に開腹して生存虫体の回収率を調べることにより T細胞依存性の防御免疫が重要な役割を担っていることが示された. その際のエフェクター細胞としてM中が重要であることも同様に示唆された. しかし免疫血清の移入による受動免疫は発現せず, 20種以上の抗マレー糸状虫単クローン抗体の投与によっても防御免疫が示されないことから, 抗体依存性の防御免疫は重要でないことが示唆された. そこで単クローン抗体を用いてマレー糸状虫のミクロフィラリア抗原を精製し, その皮下投与による能動免疫について検討した結果, 1種のIgM単クローン抗体(OvH)アフィニティ精製抗原によって, ミクロフィラリアの粗抗原と同程度の強い感染防御が誘導された. なおこの単クローン抗体は糖鎖を認識していると考えられる. さらにミクロフィラリア抗原をSDS-PAGEによって分子量10〜200KDaの14分画にわけ, それぞれの皮下投与(フロイント完全アジュバンドとともに)を行なった結果, 分子量33〜35KDaと40〜45KDaに強い感染防御と誘導する抗原が存在することが示された. 一方60〜170KDaの比較的分子量の大きな分画においては, まったく防御能を誘導することができなかった. このように, 単クローン抗体を用いて精製した抗原, またはSDS-PAGEにより分画した抗原の両者にマレー糸状虫に対する感染防御を誘導する抗原が特定され, 今後ワクチン開発研究などに有用な手掛りが得られた.
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