研究概要 |
先に抗熱帯熱マラリア原虫抗体産生hybridoma細胞を用いて、熱帯熱マラリア原虫FVO株の生殖母体形成を人為的に誘発することに成功し、この成果を基礎にして次の研究を行った。1.生殖母体形成がFVO株以外の他の株にもみられるかどうか、2.生殖母体形成誘発率を高める試み、3.誘発して得た生殖母体の生存日数を延長させる試み、4.生殖母体形成誘発活性物質の同定である。1.に関しては、0662、FCB1、FCRー3及びR・FCRー3の3株、1クローンを用いて生殖母体形成誘発実験を行い、いずれの株においても生殖母体形成の誘発を認めた。2.に関してはマラリア原虫培養液にハイポキサンチン50mg/l、レーグルタミン500mg/lを加えて培養し、生殖母体形成誘発液を作用させると、極めて高い生殖母体形成誘発率を示し、無性生殖期原虫の約10%を有性生殖期原虫(生殖母体)へ分化、誘導させていくことが出来るようになった。3.に関しては生殖母体の培養培地、培養条件などを検討し、生殖母体の生存日数を従来の4〜5日から2週間に延長させることに成功した。方法はgas flow法を用いてRPMI1640培地で原虫を培養し、5日後、生殖母体形成誘発液を24時間作用させる。その後は1μg/ml(最終濃度)のパラアミノ安息香酸を加えたWaymouth培地に切り換えて培養し、4日後から6cmのペトリ皿を使用し、それまでのgas flow法からcandle jar法に変えて培養する。その結果、通常は蚊の中腸内でのみ見られる有性生殖期の各発育期、すなわち雌雄生殖母体の雌雄生殖体への発育、受精、融合体形成、虫様体形成とその成熟がそれぞれin vitroで観察された。4.に関しては、分子量1,000以下の水溶性低分子量物質であること、200℃、30分の乾熱によって失活しないこと、などがわかった。しかし誘発物質の同定にまでは至っていない。
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