研究概要 |
昭和62年度の研究成果は以下の様である. 1.マラリア原虫寄生赤血球におけるブドウ糖膜輸送:P.yeelii寄生赤血球のブドウ糖膜輸送を2デオキシグルコース(2DOG)を用いて調べた結果, (1)2DOGの透過に関して赤血球は原虫の寄生によりキャリアー媒介型拡散から単純拡散に変化する, (2)赤血球内に入った2DOGは原血虫形質膜のグルコースキャリアーによりエネルギー依存的過程で原虫内に取り込まれる, (3)原虫のグルコースキャリアーは阻害剤感受性において赤血球のそれとは異なる, ことが認められた. 2.P.falciparumメロゾイト表面抗原の遺伝子解析:メロゾイト表面抗原遺伝子の変位領域DNAの断片をプローブにして原虫ゲノムDNAのサザンブロットに対してハイブリブイゼーションを行った. その結果, この遺伝子は非発現型サイレント遺伝子はなく, 二型性の対立遺伝子であることが明らかになった. 塩基配列の詳細な検討から, 対立遺伝子間の遺伝子内組み換えによりメロゾイト表面抗原の多型性を生じることが示唆された. この新知見は, マラリアワクチンの開発やマラリア原虫の遺伝子に強い影響を及ぼすこと思われる. 3.マラリア原虫の生体染色法の確立:陽イオン性螢光色素ローダミンがマラリア原虫形質膜の膜電位に依存して原虫内に蓄積することを認めたので, ローダミン系色素が原虫の生体染色に適するかどうかを調べた. その結果, ローダミン6Gやローダミン6GPは原虫に対して毒性を示さなかった. これは世界で始めてのマラリア原虫生体染色法で, 多方面で応用可能である.
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