研究概要 |
日本住血吸虫の虫卵形成にかかわる重要な因子として, 卵黄蛋白質形成(ビテロジエネーシス)と, その蛋白質を利用したおそらくはタンニングによる卵殻の形成がある. これらの過程にエクジステロイドが関与しているかどうか等, どのようにレギュレートされているのかを調べるためには, まず雌虫の卵黄腺に於ける卵黄細胞と, 卵殻に包含された段階の卵黄細胞(すなわち卵殻形成後の卵黄細胞)の蛋白質構成を解析しておくことが必要であった. そこで前年度, 雌虫に特異的で正常卵の産出に必須な蛋白成分は, 推定分子量34,000(34Kp)であることを明らかにしたが, 今年度はSDS-PAGEを行った後のゲルから34Kpを抽出し, それによって家兎を免疫して抗血清を作成した. この抗血清と雌雄虫体の凍結切片を用いた間接蛍光抗体法により34Kpが虫体のどの様な部分に局在しているかを検討した. その結果, 本蛋白成分の局在は卵黄腺組織にのみ一致することが明らかになり更に, 虫体を10%FCS加RPMI 1640により, in vitro で培養するとこの成分は持続しては産生されず, 正常卵の産出が見られなくなると同時に消失することも確認された. 従って, 本蛋白成分は卵黄蛋白質を構成するものと考えられた. 次に, 卵殻に包含された段階での卵黄蛋白質について検討した. 多数の卵黄細胞を包含する産卵直後の虫卵をin vitroで集めその蛋白成分につきイムノブロット法によって検討したところ, 抗34Kp抗体に反応するバンドは認められなかった. 他方で, 産卵直後の虫卵に包含された卵黄細胞由来の蛋白成分を, 産卵直後卵とミラシジウム形成卵とでSDS-PAGEによる比較解析したところ, 産卵直後卵に特徴的で発育と共に消失するものは推定分子量66,000である事が明らかとなった. 本蛋白成分と34Kpとの関係, 及び虫卵形成過程での役割について更に検討したい.
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