研究課題/領域番号 |
61570201
|
研究機関 | 国立予防衛生研究所 |
研究代表者 |
川中 正憲 国立予防衛生研究所, 寄生虫部, 室長 (50109964)
|
研究分担者 |
遠藤 卓郎 国立予防衛生研究所, 寄生虫部, 室長 (90072959)
安居院 宣昭 国立予防衛生研究所, 衛生昆虫部, 室長 (30109962)
|
キーワード | 日本住血吸虫 / in vitro培養 / 虫卵形成 / エクジステロイド |
研究概要 |
これまでの検討によって日本住血吸虫の虫卵形成にかかわる卵黄蛋白質は、SDS-PAGEで推定分子量34,000(34Kp)を示すものであることが明らかとなった。抗34Kp特異抗体を作成して行った実験によれば本蛋白質は雌卵黄腺内の卵黄細胞に局在しているが、新生卵殻に包含された段階での卵黄細胞にはもはやこの抗体に対する抗原性は証明されなかった。この事実は34Kpそのものが卵殻蛋白質の前駆体である可能性を示しており、卵殻形成後この蛋白質の抗原性に変化が起きたと考えるならばこの現象を合理的に解釈することができる。そこで、3種のアミノ酸(^<14>C-チロシン、^<14>C-グリシン、^<35>C-メチオニン)を用いた蛋白質のトレーサー実験を行った。即ち、培養液中のこれらアミノ酸が34Kpに取り込まれるかどうか、また光顕組織切片上での雌卵黄腺や新生卵殻に放射能活性が現れるかどうかについて調べた。その結果、^<14>C-チロシンが極めて短時間のうちに34Kpに取り込まれているのがオートラジオグラフィで観察された。^<14>C-グリシンの取り込み速度は遅く、^<35>C-メチオニンの34Kpへの取り込みは殆ど見られない。この時の組織切片でのチロシン由来の放射能活性は、雌では大部分卵黄腺組織にのみ認められた。次に^<14>C-チロシンでラベルした後、アイソトープを含まない培養液でさらに48時間培養をしたものについてみると、34Kpの放射能活性は非常に弱まっており、この時の組織切片での放射活性は卵黄腺から卵殻に移行しているのが観察された。更に^<14>C-チロシンを取り込ませた親虫から得た新生虫卵をSDS-PAGEで展開しオートラジオグラフィを行ったところ34K付近には強い放射能活性は認めることができなかった。以上のことにより34Kpは卵殻の前駆体蛋白質であろうと結論付けられた。また、電子顕微鏡によって卵黄細胞の帰趨と卵殻の形成過程を観察しているが、上記の結論を支持する所見が得られている。
|