研究概要 |
細菌の細胞融合には安定L型菌あるいはプロトプラストが用いられる。前者は親株の性状の一部を欠く場合が多く、後者を培養するには親株に復帰させるか、あるいはL型菌に転換させねばならない。これらの問題を回避することが細胞融合法を医学細菌学の重要な研究課題に利用するために、必要である。この問題を解決するための基礎的研究の一つとして、我々はStaphylococcus aureus MS353(pCp)株のLysostaphihプロトプラストを供試して、球菌型あるいはL型菌への転換条件を種々の復帰培地を用いて検討した。その結果、1.2%ブレインハートインフュージョンブロス、0.5Mコハク酸ナトリウム,0.01%ウシ血清アルブミン(BSA)、20mM Mg【Cl_2】および0.6%寒天よりなるR培地に接種すると、高率に集落形成がみられ、これらの集落はL型、球菌型、混合型の形態を示した。2.R培地からMg【Cl_2】を除くか、あるいはコハク酸ナトリウムをNaClに代えた培地に接種すると、出現するL型集落の球菌型集落への移行は著しく遅延した。3.BSAを除いたR培地では、集落形成の初期から周縁の不規則な球菌型の集落形態を示す部分をもったfried-egg状のL型集落が生じた。4.Mg【Cl_2】とBSAの両者を除いたR培地では、プロトプラストの集落形成率は著しく低下した。しかしコハク酸ナトリウムのかわりにNaClを用いた培地では、BSA,Mg【Cl_2】のいずれか、あるいは両者の除去は、集落形成率や出現する集落の形態に明確な影響を与えなかった。5.ペニシリンGを加え、Mg【Cl_2】を除いたR培地を用いた際、プロトプラストは高頻度でL型集落を形成した。これらの所見は、今後プロトプラストを用いて細胞融合実験を行った後に、プロトプラストを細胞壁保持型に復帰させる場合に、培養条件を決定する上に有用と考えられる。
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