研究概要 |
細菌芽胞の形成過程は遺伝的に制御された一連の形態変化を伴う分化過程のひとつであり、芽胞特異構造である芽胞殻はこの過程において新たに形成される。私達はBacillus megaterium ATCC12872株の芽胞殻は内外2層からなり、外層はgalactosamine-6-phosphateからなる多糖鎖に数種の蛋白成分が結合・充てんした構造であり、内層はケラチン様蛋白を含む多種類の蛋白成分から構成されていることを明らかにしている。本課題ではこれらの芽胞殻蛋白成分に対する抗体を主として用いることにより、芽胞殻成分の生合成機作について免疫化学的・酵素化学的検討を加え、以下の結果を得た。 1.芽胞殻蛋白成分に対する抗体を用いたimmun o-blot法ににより、種々の分子量の蛋白成分が芽胞形成期の種々の時期に生合成されていることを明らかにした。2.芽胞殻蛋白成分に対する抗血清より48k,22k,16k,daltonsの主要蛋白成分に対する特異抗体をアフィニティ精製し、交叉反応性を調べたところ、これらの蛋白成分間およびその他の主要芽胞殻蛋白成分とは交叉性はなかった。3.48k daltons蛋白成分特異抗体を用いた金コロイド法による免疫電顕により、この蛋白成分は芽胞形成後期(【t_6】)細胞では母細胞原形質と共に前駆芽胞表層に検出され、成熟芽胞では芽胞殻外層に存在することが明らかとなった。4.芽胞形成後期(【t_6】)細胞の母細胞原形質画分から、galactosamineとUDPを含む未知成分を2種分離し、精製したところ、それらはUDP-N-acetylgactosamineとその脱acetyl体と同定された。5.UDP-N-acetylglucosamine-4-epimerase活性が芽胞形成期細胞の母細胞原形質画分中に検出され、その活性は芽胞形成後期(【t_5】)より急激に上昇した。また、deacetylase活性もほぼ平行して検出された。
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