1.ヒト由来ナグビブリオの産生する各種の病原因子について検討を加えた。その結果、従来から言われてきたコレラ毒素およびナグ溶血毒以外に、新しい耐熱性エンテロトキシン(NAG-STと名付けた)や腸炎ビブリオ耐熱性溶血毒産生株が10%前後の頻度で存在していることが分った。また、Olコレラ菌の定着と関連すると報告されているプロテアーゼの産生を見るとほとんどの株で陽性であった。 2.ナグビブリオの産生するプロテアーゼの性状をOlコレラ菌のものと比較すると、免疫学的に共通点があるものの、イオン依存性や赤血球凝集反応などの生物活性が一部異なっていた。したがって、ナグビブリオの定着性はOlコレラ菌とは異なっていると考えられた。 3.多くのナグビブリオ菌株でハイドロホビシティおよび電子顕微鏡でしらべてゆくと、高いハイドロホビシティを有する株は、CFA寒天培地上で線毛を産生することがわかった。この線毛の抗原性は、毒素原性大腸菌の定着性線毛とは異なっていた。 4.エロモナスについてもハイドロホビシティおよび電子顕微鏡でしらべ、ヒト由来株で線毛の産生が認められた。この線毛を、硫安沈澱、ゲルろ過、ハイドロホビッリカラム等で精製を試み、ほぼ単一物質まで精製できた。この線毛は100℃の加熱(10分)に耐えた。現在、この線毛が定着因子として作用するかどうかを解析中である。
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