研究概要 |
本研究は、我々が従来積み重ねて来たMycebactoriumの分子生物学を病気の予防と治療に応用する方向へ脚色した一連の研究計画からなる。即ち1.BCG菌のリボソーム、抗生物質の作用、耐性獲得機構の分子生物学を発展させ、その知見を手段として2.BCG菌の形質転換をはかる。3.最終的にはmacrophageの中でBCG菌が菌体外に有効成分を産生する事になる。以下に述べる様な進行状況にある。 Mycobacterium bovis BCGのRNA遺伝子は16s-23s-5SrRNAの順に並び、最少単位の、各々1個の遺伝子が見られた(J.Bacteriol.1987,in press)。16SrRNA遺伝子の塩基配列は決定された(in preparation)。又、培養可能な菌の中で最も増殖の遅いMycobacterium lepsaemuriumのRNA遺伝子の数も最少単位であった(投稿中)。この遺伝子もクローニングした。BCG菌のpromoter領域の塩基配列の解析も進んでいる。BCG菌が1組のδRNA遺伝子を持つという発見は、ストレプトマイシンやカナマイシン等のリボソーム阻害剤に対する耐性獲得の機構は、大腸菌と異りδRNA遺伝子の変化でも起りうる事を示唆している。 抗結核剤の作用機構についても研究を進め、次の事を明らかにした。ストレプトマイシン、カナマイシンは大腸菌と結核菌では、その作用機構が根本で異る。前者では翻訳のミスを起すが、後者ではこれが観察されない(昭和61年度日米医学協力研究会日本部会で発表)。バイオマイシンは結核菌に有効であるが、その理由は透過性に非ず、抗酸菌のリボソームと強く結合するからである(Microbiology&Immunology,1987)。 形質転換に関しては、バイオマイシン不活化酵素を産生するプラスミッドを持つStreptomyces lividansをイギリスのHoopwood博士から得、このplasmidを分離しあらかじめプロトプラストにしたBCG菌に加え、バイオ耐性菌が得られるかを検討しつつある。
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