研究概要 |
1.セパシア菌のヘモリジン産生株JN106の全DNAを用い, 大腸菌で遺伝子バンクを作成した. 溶血性を示すクローンを得, 溶血性遺伝子の局在を決定した. ダイデオキシ法により, 90%に相当すると推定される遺伝子領域のDNA塩基配列を決定し, 447から成るアミノ酸配列を推定した. これは, すでに報告されている各種細菌のヘモリジンのアミノ酸配列と相同性を示さなかった. 2.ヘモリジン遺伝子をセパシア菌で解析するために, セパシア菌の宿主, ベクター系の開発を行った. IncW群のpSaからシャトルベクターであるpTS1209を作成した. 本プラスミドは接合伝達のヘルパープラスミドpRK2013により, 大腸菌からセパシア菌PCJ102へ伝達することができた. 3.ヘモリジンをウサギに注射し, 抗体を作成した. 本抗体はヘモリジン活性を特異的に阻害した. また, 他のセパシア菌2株が産生するヘモリジンは, いずれもJN106株のヘモリジンと共通の抗原性を持つことが示された. 4.ヘモリジンの作用機作について解析した結果, ヘモリジンと赤血球膜との結合は温度非依存性であるが, 膜破壊の過程は温度依存性であることが示された. 5.ヘモリジンのヒト白血球に対する毒性を調べた. 混合白血球に対して毒性を示したが, 特に顆粒球に対して著名な毒性を示した. この毒性は, ヘモリジン標品を熱処理したり, コレステロールとプレインキュベートすることにより, ヘモリジンの失活と平行して低下した.
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