新生時胸腺摘出(NTX)マウスにおいて、多くの細胞性免疫応答が欠落するが、異種赤血球抗原に対する遅延型足蹠反応(DFR)や、リステリア菌に対する感染防御(ACR)は正常に成立する。従って、DFRやACRは比較的胸腺依存性の低いT細胞集団により担われていると考えられる。本研究では、このようなリステリア特異的T細胞由来のリンホカインのひとつであるマクロファージ走化因子(MCF)の性状と、感染防御における作用発現の機構を明らかとすることを目的とした。リステリア生菌免疫NTXマウス脾細胞を抗原と共に培養した上清中には、正常マウスと同様の高いMCF活性がボイデン法にて検出された。このMCF活性は、脾細胞の抗体処理実験により、Lyt【1^+】、Thy【1^+】のリンパ球に由来していた。MCFを精製する目的で、上清をゲルクロマトグラフィーにかけたところ、分子量15000の画分に活性は集中しており、このMCF画分の活性は、トリプシン及びpH2.0処理で失活した。マクロファージに添加後の抗腫瘍活性を指標としてMAF活性をみたが、MCF画分には全くMAF活性はなく、より高分子量の画分のみに認められた。また本画分のMCF活性は抗IFN-Γ抗体で吸収されぬことからも、MAFとは完全に異ることが示唆された。本画分をマウス腹腔内に投与すると、早期に多核白血球が、また遅れて著明なマクロファージの集合が誘導され、24時間以上持続した。さらに、MCF画分を腹腔や足蹠に注射し、マクロファージの集合した時期にリステリア菌を感染させると、菌の排除が促進され感染防御に有効であることが示された。今後は、感染防御のエフェクターリンホカインであるMAFとしてIFN-Γを用い、このMCFとMAFとの協同作用のカイネティクスや、リステリア以外の細菌に対する防御効果を検討する予定である。
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