研究概要 |
Tissue factor(TF)活性測定のための凝固因子の精製,合成基質法によるTF測定法の確立,TFとフィブロネクチン(FN)との関係,抗凝固活性をもつ顆粒球由来の塩基性蛋白(CAP)と内毒素(LPS)との結合性などについて以下の成果を得た。 1.凝固因子の精製:ニホンザル血漿から【Ba^(++)】吸着-抽出-硫安塩析-透析の手順で凝固因子のProthrombin complex(【VII】,【IX】,【X】,【II】因子を含む)を精製し、これを合成基質法に用いた。 2.TF活性の測定:LPS投与後のサルから骨髄細胞を集め、さらに顆粒球画分を得た。このTF活性を対照群のそれと、凝固法および蛍光合成基質法で比較した。いずれの方法においても細胞浮遊液(Intact cell)のTF活性がlysateより高く、また、TF活性は膜画分に認められた。LPS投与によりTF活性が亢進し、両方法の相関はよかったが、特異性および感度の点で合成基質法が優れていた。TF活性は発熱性ともよく相関した。 3.CAPとLPSとの結合:CAPはR型LPS,リピドAで感作した赤血球を凝集させ、この現象は赤血球膜に結合したRe-LPSのリピドAおよびKDO部分とCAPとがイオン結合と疎水結合を介して結合することに由来することが明らかとなった。CAPとLPSとの結合により濁度が増加することも観察された。 4.TFとFNとの関係:マウス血漿中のFNを抗ヒトFN抗体を用いたゲル内沈降反応および免疫濁度測定法を応用して測定した。LPS投与8時間でマウス血漿中のFNが約20%減少した。また、FNをリン脂質やTF(標準品,骨髄細胞)とインキュベートすると、いずれもの血液凝固活性化能が失なわれた。これらのことから、FNはTFの活性基であるリン脂質と結合することによりTF活性発現をブロックしていることが示された。エンドトキシンショックの予防,治療などにCAPやFNなどが応用される可能性も示された。
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