研究概要 |
内毒素(LPS)による播種性血管内凝固(DIC)発症の機作を解明する目的で(1)内毒素血症時の骨髄細胞の組織因子(TF)活性の測定と(2)抗凝固活性をもつ顆粒球由来の塩基性蛋白(CAP)について検討し以下の成果を得た. 1.TF活性:京大・霊長研での共同利用研究によるもので, 対象群2頭, LPS投与群(E,col;LPS,1mg/kg,i.V)7頭の計9頭のニホンザルを用いた. TF活性は凝固法と合成基質法の2方法で測定した. (1)LPS投与群のうち5頭に骨髄内顆粒球画分のTF活性亢進がみられ対照群に比し凝固法で6〜12倍に, 合成基質法でも6〜44倍に高まった. (2)ニホンザルにおいてもマウスの成績と同様にTFは細胞膜画分に存在した. (3)骨髄, 脾の単核球画分のTF活性も亢進したが, 未梢血単核球では対照と差がなかった. 2.CAPの活性:(1)CAPはLPSとの結合性をもち抗凝固活性, 抗菌活性などを示した. (2)CAPの抗菌活性は, CAPとLPSとの結合の最適条件下, すなわち, 低イオン強度のとき高かった. (3)CAPをあらかじめRe,S型菌と処理すると, LPS結合性, 抗菌, 抗凝固のすべての活性が消失した. (4)これら3つの活性はCAPとS,Re-LPS, リピドAとのインキュベーションによっても抑制された. (5)CAPとLPSとの結合性は, LPSをあらかじめ抗LPS血清とインキュベートした場合でも影響されなかった. (6)CAPはヘパリンとも結合し, その結果CAPのすべての活性が抑制された. この結合は可逆的であり, これを利用してヘパリンーセファロースでCAPを精製中である. 内毒素性DIC発症に細胞膜由来のTFが重要であることがサルの実験からも強く示唆された. 一方, CAPは抵菌活性, LPSとの結合およびその無毒化, さらに抗凝固活性などを有していることから, CAPは感染症におけるDIL発症におけるDIC発症に対して生体防御の役割をもっているものと考えられる.
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