研究概要 |
1.エンテロコリチカSTおよび類似ペプチドの化学合成とその毒素活性。 エンテロコリチカSTの一次構造に従ってアミノ酸30残基から成るペプチド(1-30)、および類似ペプチドとしてC未アミノ酸19残基とN未11残基より成る各ペプチド(12-30),(1-11)を化学合成した。ペプチド(1-30),(12-30)の毒素活性は自然型毒素と等しかったが、ペプチド(1-11)は無毒であった。 2.培養細胞のC-GMP代謝に及ぼす毒素ペプチドの作用。 毒素ペプチド(1-30)をL細胞やマウス脾細胞に加えると、これらの細胞のC-GMP量が10分以内に3〜6倍増加したが、毒素ペプチド(12-30)にはその作用はなかった。しかし、両ペプチドは分離したL細胞膜のC-GMP量を同様に増加させることから、少くとも培養細胞に対するC-GMP量の上昇作用は毒素活性とは平行せず、ペプチド(12-30)はむしろ毒素原性大腸菌のST類似の作用を有していた。 3.L細胞による毒素ペプチドの取り込み。 【^(125)I】標識ペプチド(1-30)は量依存的にL細胞内に取り込まれるが、ペプチド(12-30)は一定量以上は細胞に結合しなかった。ペプチド(1-30)のN未アミノ酸配列を含む立体構造が腸管細胞以外の細胞の膜通過に重要な働きをしていることが示唆された。 4.大腸菌STp遺伝子の修飾によるワクチン株開発の試み。 エンテロコリチカ菌、毒素原性大腸菌などのSTは抗体により交叉中和反応を示す。すでに明らかになっているST遺伝子を特異的塩基置換法で修飾し中和抗体産生能のある無毒株を作成することを目的として、数種類の無毒株を得た。現在、これらの株の産生する無毒ペプチドあるいは弱毒ペプチドの抗原性を検討している。
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