研究概要 |
毒素原性大腸菌の産生する耐熱性下痢原因毒素STpの11位のAsnのコドンをLysおよびArgのコドンに置換したプラスミドを保有する変異株の培養上清から変異STpを精製した。変異STpの性状を親株STpのそれと比較して次のような結果を得た。 1.変異STp(lys-11)、変異STp(Arg-11)はゲルろ過では親株STpと同じ位置に溶出され分子量はほぼ同じであると推察された。 2.変異STp(Lys-11)がPH5.3、変異STp(Arg-11)がpH4.2で親株STpのpH4.1とは異っていた。 3.変異STpの抗原性は親株STpと同様、100℃、10分間の加熱に安定である。又、変異STpに対する抗体は親株STpの下痢毒素活性を中和した。 4.変異STpの下痢毒素活性を親株STpのそれと比較した結果、変異STp(Lys-11)では1/200以下に、変異STp(Arg-11)では1/800以下に低下していた。腸管ループテストにおいても両変異STpは液体貯溜活性を失っており、生菌を用いたループテストでも変異菌には下痢活性は認められなかった。 STp7位のGluをGlnに、11位のAsnをArgまたはLysに置換するよう作製した変異株の302(Gln-7,Arg-11)および変異株の303(Gln-7,Lys-11)の培養上清には、下痢毒素活性は認められなかった。しかし、それぞれの培養上清とSTp単クローン抗体とは十分に反応し、本菌のワクチンへの有用性を示唆した。
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