研究概要 |
ウェルシュ菌α毒素は、血管平滑筋収縮を誘導するが、このとき、作用発現には【Ca^(2+)】取り込みが必須であることをすでに明らかにしている。一方、本毒素がホスホリパーゼC活性を有することも知られているので、本研究において、リン脂質代謝、そして、それに関連して、アラキドン酸カスケードについても検討した。その結果、摘出血管を毒素処理すると、ホスファチジルイノシトールとホスファチジン酸のdenovoの合成が誘導されること、さらに、アラキドン酸合成が亢進されることが判明した。一方、本毒素作用は、アラキドン酸カスケードのKey enzyme、すなわち、サイクロオキシゲナーゼの阻害剤,インドメタシン,アスピリン,ゾメピラックナトリウムによって、さらには、トロンボキサン合成阻害剤、OKY-046、そして、トロンボキサン拮抗剤、ONO-3708によって阻害されることも明らかとなった。以上の結果から、本毒素によってホスファチジルイノシトール(PI)代謝回転が活性化され、それに関連して、アラキドン酸合成が亢進し、次に、アラキドン酸カスケードが活性化されて、トロンボキサン【A_2】合成が誘導され、血管収縮がおこる系が推察される。 本毒素による血小板凝集も、基本的には、血管収縮の場合と同様、本毒素によって、PI代謝回転 亢進,【Ca^(2+)】取り込み 促進が必須のステップであることが判明したが、毒素によってアラキドン酸カスケードの活性化はひきおこされないので、血小板凝集因子(PAF)等の合成促進が関係している可能性が推察される。
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