研究概要 |
ヒトの新鮮排泄便を用いて、これを従来行われている80℃,10分間の熱処理、エタノール処理、クロロホルム処理などによってクロストリジウムの分離率を検討したところ、エタノールおよびクロロホルムによる処理と熱処理の間に大きな差は認められなかった。 一方、ヒトの腸内に優勢に常在しているClostridium innocuum,C.ramosum,C.paraputrificumおよびC.clostridiiformeなどのレシチナーゼ陰性のクロストリジウムの選抗培地の考案を試みたところ、Eggerth-Gagnon寒天にプロピオン酸塩,Tween80,ノボビオシン,コリマイシン添加およびオレアンドマイシン添加した各培地さらにTween80,リファンピシン,コリマイシン,ネオマイシンを添加した培地がC.innocuum,C.ramosumおよびC.clostridiiformeの検出に適しているようであった。しかしながら熱および薬物各処理により分離されるクロストリジウムの各菌種に選択性のある培地の検討が望まれた。上記の培地および処理法によって、ヒトの新鮮排泄便よりクロストリジウムの分離を試みたところ・11例より328菌株が分離され、それらのうち61.3%が同定されたが、38.7%は未同定であった。同定された菌株はC.perfringens(5.6±1.7,対数値による糞便1g当りの平均値±標準偏差,9例,検出例),C.ramosum(7.7±1.4,7),C.clostridiiforme(7.7±1.2,6),C.innocuum(8.1±1.8,3),C.paraputrificum(6.2±1.6,3),C.butyricum(6.7±4.1,3)およびC.sphenoides(6.7±1.6,3)であった。このように熱および薬物の各処理の併用および選択培地の利用によってヒトの腸内に常在するクロストリジウムの分離が可能となった。しかしながら、未同定株も多く、今後分類学的研究の必要性が明らかとなった。
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