前年度の研究によって、高食物繊維食より高脂肪食の摂取時やヒトの老化にともない、腸内ではC.perfringens、C.innocuum、C.paraputrificum、C.clostridiiforme、C.coccoidesおよびClostridium spp.の各菌種が共通して、菌数および出現頻度とも高くなることを見いだした。本年度はこれの菌種(C.innocuum98株、C.paraputrificum88株、C.clostridiiforme58株、C.coccoides34株、C.perfringens45株、C.tertium23株およびClostridium spp.〔未分類株、35グループ〕65株、計411株)を用いて、発癌に関与する腸内酵素、特にβ-グルクロニダーゼおよび7α-デハイドロキシラーゼやアンモニア、インドールおよび硫化水素などの産生能、硝酸塩の還元能を検索して、どうような分離株がこれらの機能を保有するのかを検索した。β-グルクロニダーゼ産生株は既存の菌種に強い反応は認められないが、Clostridium spp.のうち8種類のグループに陽性反応が認められ、とりわけClostridium spp.の2、3および6に強い反応を示した。これらの菌株はいずれも高脂肪食摂取時に分離された菌株であった。7α-デハイドロキシラーゼ産生株は強い陽性反応をしめす菌種・菌株は認められなかった。アンモニア産生株はC.clostridiiforme、C.perfringensおよびClostridium spp.のうち6、14、15、17、25、32、33の各グループに陽性反応が認められ、老化に伴って高頻度に出現する菌株が多いようであった。さらにインドール産生株はClostridium spp.のうち4、6、7、12、24、27のグループに強い陽性反応が認められた。また、硫化水素産生株はClostridium spp.のうち4、9、13のグループに認められ、硝酸塩還元株はC.perfringens、C.tertium、C.clostridiiformeおよびClostridium spp.8、15、17、25、26などに強い反応が認められるようであった。しかしながら、硫化水素の産生株、硝酸塩の還元株の分離源に特徴は認められなかった。
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