研究概要 |
D群赤痢菌のもつ120メガダルトンのプラスミドは、細菌の細胞侵入性に必要不可欠であり、又このプラスミドを獲得した大腸菌K-12株は細胞に侵入できるようになる。細胞侵入性に必要な遺伝子及びその産物を同定するためにまず大腸菌にて細胞侵入性を欠如している変異株の分離を行なった。分離方法は、トランスポーソンTn【1!_】を用いた。120メガダルトンのプラスミドに特異的にTn【1!_】を挿入させる方法を行い、独立に500のTn【1!_】挿入株を作製し、その細胞侵入性をLLC-MK2培養細胞に侵入できるかどうかで判定した。7株の細胞侵入性欠失株を得た。その7株のTn【1!_】挿入部位をTn【1!_】をプローブとしてサザーンハイブリダイゼーションで調べたところ4つの異なるHind【III】断片に位置していた。それらの変異を相補するクローンを得るため、野生型の120メガダルトンプラスミドをHind【III】で切断し、PHSG415ベクターにつなぎ遺伝子銀行をつくった。その遺伝子銀行の中から各Tn【1!_】挿入部位に相応する遺伝子を、Tn【1!_】挿入近傍遺伝子をプローブとしてコロニーハイブリダイゼーションによりつくってきた。それらの遺伝子がTn【1!_】挿入細胞侵入性欠失株の細胞侵入性を相補することができるかどうかを調べた。2.6+4.1kbのHind【III】断片が共存することにより7株の欠失株のうち3株の細胞侵入性を回復させることができた。その断片は、38,42,47,および80KDaのタンパク質をコードしており、そのうち少なくとも38KDaのタンパク質が細胞侵入性に関与していることを明らかにした。38KDaをコードする遺伝子はD群ばかりでなく、A,B,C群赤痢菌及び組織侵入性大腸菌にも保存されていた。この遺伝子だけでは細胞侵入性を賦与できないので、他の遺伝子も複雑にからみあい細胞侵入という性質を与えることができるなると孝えられる。
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