トポイソメラーゼ【II】(Topo【II】)の阻害剤として知られるVP-16-213を用い、単純ヘルペスウイルス(HSV)DNA合成にTopo【II】の関与があるかどうかを検討した。HSV2型DNA合成は10ug/mlのVP-16により80%以上抑制され、その阻害曲線は細胞DNA合成のそれと類似していた。HSV.DNA合成がほとんど完全に抑制される薬剤存在下でも、ウイルスの初期蛋白質合成に阻害は認められなかった。また、VP-16で感染細胞を処理すると、新生ウイルスDNA錠に切断が生ずることがわかった。試験管内でのTopo【II】反応系にVP-16を加えると二重鎖切断を起こすことが確認された。以上の結果は、HSVDNA複製にTopo【II】が関与していることを強く示唆している。しかし、感染後のTopo【II】活性には変化が認められないこと、VP-16に抵抗性のウイルスが分離されないことなどから、HSVDNA複製に作用しているのは細胞由来の酵素である可能性が強い。 HSV DNA複製に中心的な役割を果しているウイルスDNAポリメラーゼについては、付随する3´→5´エキソヌクレアーゼの機能について検討し、また一次構造の決定を行なった。3´末端を放射標識したdA4000/dT46〔【^3H】〕dT1とdA4000/dT46〔【^3H】〉dC1を基質として用いHSV DNAポリメラーゼの至適条件下で反応を行なわせると、mismatched pairを形成している3´末端の〔【^3H】〉dCが急速に除去された。また、HSV ONAポリメラーゼは、大腸菌のpolIに比べ有意に高い3´→5´エキソヌクレアーゼ/ポリメラーゼ活性比をもっていることが明らかになった。HSV DNAポリメラーゼは、1240個のアミノ酸から構成され、1型とのbsuologyは91%であった。アフィジュリン抵抗性株の変異部位、1型及びEBV DNAポリメラーゼの一次構造との比較などから、活性中心の形成に重要な領域はC末側の1/2に含まれていることが推定された。
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