1.HVJの【F_1】糖蛋白N末端アミノ酸配列に相当する、18ケのアミノ酸より成るペプチドを合成し、これに対するポリクロナルウサギ抗体を作製し、その性状を解析した。(1)シリカ吸着合成ペプチドをウサギに接種して、合成ペプチドを抗原としたELISAに陽性の血清を得た。(2)この血清は、HVJ(伏見株)粒子を抗原とした場合にもELISA陽性を示した。(3)しかしながら、HVJ粒子を免疫して得られたウサギ血清は、合成ペプチドを抗原としたELISAには反応しなかった。(4)以上の事から、合成ペプチドを免疫原として用いた場合、それに特異的に反応する抗体が作られる事がわかった。(5)上記ELISA陽性血清の赤血球凝集抑制価は低く、1:4程度であった。(6)蛍光抗体法による50%感染細胞数減少を指標として中和反応を行った結果、1:10程度の抗体価であった。(7)HVJの溶血阻止反応は陰性であった。(8)合成ペプチド抗体をウィルス粒子に結合した後、補体を添加すると、溶血能の著明な増加が得られた。(9)同様の補体処理により、中和反応も増強された。(10)ヒトの1型パラインフルエンザウイルスに対し、ウサギペプチド血清は低い乍ら中和活性を示したが、(11)麻疹ウイルスに対しては活性を示さなかった。 2.合成ペプチドに対するモノクロナル抗体作製の試み。合成ペプチドに、シリカ及びKeyhole linpet hemocyaninを結合させ、それぞれラット及びマウスを免疫し、モノクロナル抗体の作製を試みたが、現在まで成功していない。 3.今後の研究の展開。当初の計画は、本年度の研究によりほゞ達成した。中でも、【F_1】合成ペプチドに対する特異的抗体が得られた事は、大きな成果であった。此の事実は非常に重要なので再確認が絶対に必要である。今後はBSA結合合成ペプチドを用いて確認実験を行なう。
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