研究概要 |
〔研究目的〕単純ヘルペスウイルス(HSV)感染の場となる表皮内にはIa抗原陽性で、抗原提示能を有するランゲルハンス細胞が存在する。この細胞のHSV感染に対する防御機構における役割を明らかにすることを目的とする。 〔研究成果〕1.ナイロンウール通過性の脾細胞は、表皮細胞と紫外線不活化したHSVの両者を加えた場合にのみ、有意の【^3H】-thymidineの取り込みを示した。この反応は、表皮細胞中のIa抗原陽性細胞を除去すると消失した。2.到死量のHSVを側腹部皮内に接種されたヌードマウスに、表皮細胞および紫外線不活化HSVを加えて培養された脾細胞を移入すると、帯状皮疹の形成はほぼ完全に抑制され、マウスは回復した。3.表皮細胞および紫外線不活化HSVを加えて培養された脾細胞を移入されたマウスでは、移入後1日目より皮膚のHSVは減少し始め、7日目には検出されなくなった。表皮細胞を欠く条件下で培養された細胞を移入された群では、HSVの排除は遅れ、帯状皮疹出現後に排除された。4.表皮細胞および紫外線不活化HSVを加えて培養された脾細胞を、抗Lyt1,2抗体と抗Lyt2.2抗体と補体で処理した後に移入すると、抗Lyt2.2抗体と補体で処理した細胞の方がより少ない移入量で有効であった。 〔考察と今後の研究の展開〕以上の研究結果から、紫外線照射等によるランゲルハンス細胞の機能低下が、HSVの排除過程を障害し、再発病変の出現あるいは皮膚病変の重症化につながる可能性があると考えられる。今後は受身移入の実験を用いて感染防御におけるランゲルハンス細胞の役割の解析をすすめる。
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