研究概要 |
EBV法により作製したモノクローナル抗体48-1及びS-1の肝炎特異性については前年度までの研究で非A非B型(NANB)肝炎と密接な関連性を持つことを明らかにしていたが、デルタ肝炎との関係については材料入手困難なためもあり不明のまま残った。そこで本年度は米国NIHやCDCの協力も得てこの点を明らかにすると共に、これらの抗体の特異性について更に詳細な検討を行った。第一段階としてチンパンジー肝との反応性を蛍光抗体法でテストしたが、調べたチンパンジー数はNANB肝炎57頭,A型肝炎16頭,B型肝炎31頭,デルタ肝炎19頭,生常41頭でサンプル総数1057である。またこの内NANB肝炎18頭,A型肝炎2頭,B型肝炎1頭,デルタ肝炎12頭については接種前から回復後に至るまで、また正常チンパンジー16頭についてはそれに相当する期間に採取された経時的生検肝についても調べた。その結果、これらの抗体はNANB肝炎(53/57)の他にデルタ肝炎(14/19)とも反応することが新たに明らかになった。デルタ肝炎肝との反応はNANB肝炎肝の場合と同じで肝細胞質内に顆粒状の蛍光が認められた。しかし、対応抗原の経時的出現のパターンは異なりNANB肝炎チンパンジーにおける出現持続時間の方がデルタ肝炎のそれよりも長い。デルタ肝炎においてこの対応抗原の出現時期とデルタ抗原の出現時期はほぼ一致する。 一方、A型やB型肝炎あるいは正常肝との反応については前回の観察結果を確認するもので、すべてネガティブてあった。48-1やS-1の対応抗原の本体についてはまだ不明な点が多いが、チンパンジー肝組織でみるとNANB肝炎だけでなくデルタ肝炎にも出現することから考えて、これら二つのウイルスに共通なpathologie effectsにより引起されるユニークな宿主抗原なのかも知れない。今後更にこの抗原抗体の性状を明らかにしていく予定である。
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