研究概要 |
日本脳炎ウィルス遺伝子RNAに相補的なDNAを分子クローニングし, その塩基配列を明らかにし, E蛋白のアミノ酸配列を推定した. その結果, E糖蛋白は3つのドメインとそれをつなぐ構造よりできており, 重要なエピトープは, 3つのドメイン上に乗っていることが推定できた. このドメイン構造は, 日本脳炎ウィルスが属する他のフラビウィルス間で共通であり, 特にミスティン残基は全て一致しており, E蛋白の立体構造は, フラビウィルス間で基本的には良く似ていることが明らかとなった. 一方単クローン抗体を用いた研究から, 感染防御抗原エピトープは, E蛋白立体構造上限定された部域に存在していることが, 明らかとなった. この感染防御抗原エピトープに対する単クローン抗体を用いて, 単クローン抗体escaped mutantsを分離した. このmutautsのE蛋白遺伝子cDNAを分子クローニングし, その塩基配列を調査したところ, E蛋白の3つのドメイン構造のうち, N末端部分のドメインに, アミノ酸の置換があることが明らかとなった. このことは, 感染防御エピトープは, N末端部分ドメインに存在していることを示唆するものである. 以上の結果をもとに, 組換えバキュロウィルス, SV40ベクター, invitro Translation Systemを用いて, E蛋白の発現をはかった. E蛋白は, 最初unfoldの形で発現された後, endoplasmic reticulum膜上でfoldされ, 単クローン抗体と反応するnativeな構造になることが明らかとなった. このnativeなfoldされた構造のE蛋白の発現には, E蛋白上流の遺伝子構造が必要であることを明らかにした. これらの知見をもとに, 高い中和活性を持った抗体を産生させることができる. E糖蛋白を発現できた. このことは, コンポーネントワクチンと診断試薬の開発を可能にするものである.
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