研究概要 |
免疫応答の調節機構の中で、イディオタイプを介する調節様式が重要な役割を果たす。我々は、自己イディオタイプ(Id)特異的増強性B細胞とキラーT細胞活性を検出することに成功した。これらはいずれも自己Idと主要組織適合性抗原(MHC)を認識しつつ、自己Id産生に対して前者は促進的に、後者は抑制的に働きかけていることを証明してきた。本年度は、両者の機能発現において、遺伝的拘束性を決定する自己抗原、すなわちIdとMHCについて、四親性キメラマウスを用いた研究を中心に行なった。 1)増強性B細胞の機能発現について、自己Id及びMHC認識の適応分化を、四親性骨髄キメラマウスを用いて解析した。MHC認識に関しては、増強性B細胞が適応分化することが証明できた。しかしながら、自己Id認識については、その骨髄細胞が由来する宿主マウスが、相当するId産生能を持たなければ抗Id特異性は出現せず、適応分化しえないことが判明した(J.Immunol.,1987)。最近自己IdとMHCを同時に認識し、かつ増強性活性を有するB細胞クロン長期培養株へ樹立に成功したため、今後、その受容体構造の遺伝子解析を進めたい。自己Id認識が適応分化し得ない事を遺伝子レベルで解析する予定である。 2)自己Id特異的キラーT細胞は、B細胞とは全く異なり、四親性骨髄キメラマウスにおいて、Id認識,MHC認識のいずれもが適応分化し得ることを証明した(第16回日本免疫学会総会,J.Immunol.,投稿中)。一方、我々は、自己Id特異的かつMHC拘束性のキラーT細胞クロンの長期培養株の樹立に成功し、これを報告した(Eur.J.Immunol.,in press)。現在、このキラーT細胞抗原受容体遺伝子,Tiα及びTiβのcDNAクローニングを行なっており、その遺伝子構造についても、近い将来報告する予定である。
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