研究概要 |
突然変異遺伝子lprはある一定の表現形質を示すTリンパ球の異常な増殖を促す。しかも、このリンパ球の異常な増殖にともない高免疫グロブリン血症や自己抗体の産生などの免疫異常が出現し、lpr遺伝子の作用で増殖するTリンパ球の機能と免疫異常との関係が注目されている。本研究ではこの増殖T細胞の分化増殖における異常を明らかにする目的で、異常に発現されるリセプターないしは細胞膜蛋白を解析し、種々の増殖因子との関係を追求している。本年度はlprマウスで異常に増殖し、種々の免疫異常の原因と考えられるT細胞に発現されるユニークな細胞膜蛋白の免疫化学的な解析を行うと同時に、異常T細胞の増殖因子に対する反応性を検討し、以下の結果を得た。 1.突然変異遺伝子lprを持つマウス(lprマウスと省略)で異常に増殖するT細胞(lpr細胞)のみが発現し、正常細胞には証明し難いLp-1抗原は過ヨード酸処理で失活し、抗原決定基の構成に糖鎖が関与していることが明らかとなった。しかし、糖蛋白であるか糖脂質であるかは未解決である。 2.lpr細胞に異常に発現される抗原の一つであるLp-2抗原は正常個体ではB細胞と一部の活性化T細胞のみが発現する膜抗原で、その組織分布は【B_(220)】抗原の組織分布と極めてよく似ている。このため、【B_(220)】抗原を検出する既存のモノクロナール抗体3種を用い、交叉阻止反応を行いLp-2と【B_(220)】の異同を検討している。 3.lpr細胞の細胞周期(cell cycle)を検討した結果、大部分の細胞は【G_0】ないし【G_1】の細胞周期にあり、S期の細胞は極めて少い。この結果は異常なリンパ節の腫大をもたらすlpr細胞の増殖は緩慢な増殖であり、腫瘍性の増殖とは異なることが明らかとなった。また、lpr細胞は既知のIL-1,IL-2,IL-3の各増殖因子には反応しなかった。
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