研究概要 |
デュシェンヌ型筋ジストロフィー症(DMD)は染色体【X_p】21の領域の欠失あるいは変異によって起る遺伝性疾患である。今年度はDMD遺伝子診断の方法の確立を目的として研究に着手した。遺伝子診断には少量の試料を用い全ゲノム中1コピーの遺伝子の有無あるいは変異が検出されるような高感度の技法が要求される。この要求を満たすように以下の事を行った。すなわちONAプローブの増殖調製,プローブの【^(32)P】標識,白血球DNAの抽出,サザンブロッドハイブリダイゼイション及びオートラジオグラフィーである。Xp21領域のDNAプローブ(【_pERT】87-1,【_pERT】87-8及び【_pERT】87-15)はKunkelより入手した。これらのプローブをE coliで増殖抽出しさらにアガロース電気泳動を行い、アガロースゲルよりマックスイールド-NP核酸蛋白回収器を用いて分離精製した。プローブの【^(32)P】標識はオリゴラベリング法にて【^(32)P】dCTPで行った。白血球DNAは血液をトリトンX-100で処理後、単離された核より抽出した。1mlの血液より30〜40μgのDNAが得られた。制限酵素でDNAを切断後、DNAサブセルを用いて1%アガロース電気泳動を行い、DNA断片をナイロンメンブレンにブロットした。【^(32)P】標識プローブと6xSSC中で65℃,48時間ハイブリダイゼイションを行い、SSCで洗條風乾後、高感度スクリーンを用いて3〜10日間オートラジオグラフィーを行った。最初は10μgのDNAを用いていたが、この方法で4μgのDNAを用いても遺伝子の検索は可能である。現在用いている【^(32)P】の量(3〜8μCi)を増加すれば4μg以下のDNAでも検索可能と考えられる。 5例のDMD患者の血液DNAを調べた。上記のプローブとハイブリダイゼイションをしない症例が1例見られた。これはXp21領域の欠失によるものと思われる。
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