初年度は感作性物質の許容濃度設定の基礎的作業としてTD・Iの気中濃度測定の際のガスクロマトグラフ用データ処理装置(クロマトレコーダ11)およびネブライザー式(TUR-3000)を購入し、また、吸入チャンバーおよびボディプレスモグラムチャンバーを作製し、所定の場所に設置した。これらの装置の有用性を確かめるために、ヒスタミンによる吸入誘発試験を試行した。これにより当初計画した実験が可能であることが確められたので、まず試料とするTDIおよび小麦粉の吸入による一次刺激閾値の検索を行い、TDIについては他研究者の示す値に類似する成績を得た。小麦粉については、ネブライザーによる濃度コントロールに若干の問題が生じ、現在検討中である。TDIによる吸入感作および誘発法はKarolらの方法に準拠し、モルモットにおけるアレルギー反応の惹起とその測定法の再現性および鋭敏性について検討を行ない、アレルギー反応の量・反応関係の検索に関する予備実験を終了した。また、本研究の主目的である感作性物質の許容濃度設定のための基礎資料を得るため、比較的均一なアレルゲンの曝露を受けていると思われる食鳥センターの従業者を対象にアレルギー学的調査を実施し、対象者のアレルギー性疾患の有病状態とIgE抗体量を把握した。さらにJICSTやExcerpta Medica等から感作性物質の許容濃度設定に関連した文献の収集を行った。また、世界各国の研究者に対して許容濃度表と感作性物質に関する資料と情報の提供を求め70ヵ国余から回答を得た。これらの資料に考察を加え、許容濃度表への感作性物質の表示について検討した。 以上のごとき実験成績および収集資料を基礎に、次年度も引き続きこの課題を追及する予定である。
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