研究概要 |
骨微細構造に及ぼすCdの影響を検索するために、Cd投与ラット骨におけるX線マイクロアナリシス(EPMA)法を確立することが本年度の計画であった。そのため(1)骨試料の調製方法の検討、(2)EPM分析条件の決定および、(3)EPMAによる元素の定量化を試みた。結果は、骨皮質および海綿骨の構造を走査電子顕微鏡で観察しながらEPM分析をおこなうためには、(1)骨を液体窒素中で凍結割断し乾燥後、割断面に100【A!°】の厚さに金を蒸着し、(2)EPM分析条件は、15〜23KV;0.05〜0.10μA;照射ビーム径1〜20μが最適であった。この場合、Ca,【K_α】3.36【A!°】,【K_β】3.09【A!°】;P【K_α】6.15【A!°】,【K_β】5.80【A!°】;Mg,【K_α】9.89【A!°】;Na,【K_α】11.91【A!°】,【K_β】11.57【A!°】,11.73【A!°】;S【K_α】5.37【A!°】;Zn,【L_α】12.28【A!°】;Cu【L_α】13.35【A!°】;F,【K_α】18.30【A!°】は容易に検出され、また、Ge,Cdはかなり困難ではあるが技術の習熟および改良により検出できた。(3)これら元素のEPMAによる定量化については標準試料の作製も含めて現在検討中である。軟骨細胞等の骨細胞のEPM分析については(1)試料の固定方法は、グルタルアルデヒドで固定後脱水,臨界点乾燥した標本およびアルコール固定による標本あるいは固定せずに凍結乾燥した標本について走査電顕像の観察及びEPM分析をおこない比較検討したが、それぞれ一長一短があり、なお検討の必要がある。(2),(3)については上記と同様である。 来年度は、骨細胞のEPM分析方法および元素の定量については本年度に引きつづき検討,改良を加えることとし、さらにCd投与ラットの骨皮質および海綿骨組織についてEPM分析をおこなって、Cdの投与濃度に応じて各元素がどのような変化を示すのかをたしかめる。また、骨強度試験によって亀裂が生じた部位について、微細構造の変化を走査電顕で観察するとともにEPM分析をおこない、骨強度低下と構造変化ならびに構成成分の変化との関係を明らかにする。
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