研究概要 |
X線マイクロアナリシス(EPMA)方法を用いて, 骨微細構造に及ぼすCdの影響を検索することを目的として, 昭和61年度は, 本方法の確立を目ざした. そのために, 骨試料の調製方法の検討, EPMA分析条件の決定および検出した元素の定量化を試みた. 昭和62年度は, 前年度の結果をもとにして, Cd, 10ppmを4週間投与した幼若ラットの上腕骨についてEPMA分析をおこなった. EPMA分析は, まず, 走査電子顕微鏡で骨試料を観察しその同地点について定性分析及び面分析をおこなった. 骨の主要構成元素:Ca, P, K, Na, Mg等の場合は15KV;0.05〜0.10μA, ビーム径1〜20μmで容易に検出できるが, 微量元素の場合は, それぞれについて最適条件を決定することが必要である. Cdの検出については, 使用した機種にはCd:K_αの波長を検出するための結晶分析器が装備されていないので, Cd:Lαについて検出を試みた. このCdの検出については, 試料の調製方法, 測定部位の検討ならびに分析条件の検討などをおこない, 骨端部の数箇所において, かなり小さなものではあるが, Cd:Lαと思われるピークを検出した. しかし, バックグランドを減じるための操作をするとこのピークは検出できなくなることから, 現段階ではCdの局在を見い出したとはいえない. 骨の主要構成元素については, 骨での分布と大まかな量を求めてCd投与群と対照群とを比較したが, Ca, P, K, Na, Mg, Clについては, 両群の間に差はみとめられなかった. S, Zn, Fe, F等の元素は10μmの照射径で波長とピーク高さを調べる定性分析をおこなうと, はっきりとみとめられるが, 但し, Cd投与群と対照群の間には差はみとめられない. これらの元素の面分布の分析による局在部位の同定もまた, 試みたが, 元素より発生するX線の信号が小さく, 明確な面分布はまだ得られていない.
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