研究概要 |
我々は, 食質, 特に含硫アミノ酸を中心とする食質による動脈硬化性疾患の予防を志向して, 高血圧を自然発症し高脂血症を誘導しやすい脳卒中易発性高血圧自然発症ラット(SHRSP)をモデル動物として, 食質と脂質代謝の研究を進めている. そして昨年度は, タウリンが高脂血症におけるコレステロール代謝改善作用を有し, その作用機序としてリポ・アポ蛋白の動態から, 肝臓におけるVLDL(β-VLDLやLDLの合成・分泌抑制ならびに肝コレステロールの胆汁酸への異化促進が示唆されることを報告した. 今年度は, 昨年度に引き続き含硫アミノ酸としてタウリンのprecursorの1つであり, 高血圧の予防にも有効視されているL-メチオニン(L-Met)の効果を検討した. L-Metは, タウリンと効果を比較しやすくするため, 飲水中に加え飲水とともに投与することとした. この際L-Met特有の臭気があるが, 飼料ならびに飲水摂取量は, 実験群と対照群の間に差異はみられなかった. またL-Metの過剰投与は成長阻害をおこすことが知られているため, 慎重に0.3%と0.6%の2種の濃度を採用した. その結果, 予想に反して0.3そして0.6%L-Metともにむしろ高脂血症を増悪する結果を示した. これはHDL分画はほとんど変動していなく, β-リポ蛋白分画の上昇促進によるものであった. なお0.3, 0.6%L-Metともにほぼ同等の作用を示し, 成長障害はみられなかった. この予想に反した増悪効果の原因として, 杉山らの報告を考慮すると, 過剰のL-Metが代謝される際のメチル基転移のAcceptorのDepletionが主原因ではないかと考え, メチル基のAcceptorとして, グリシン(Gly)を同時に添加することを試みた. すなわち高脂血症を誘導した際に0.3%L-Met+2.0%Glyを併用投与しその効果を検討した. すると, タウリンの場合と異なり, β-リポ蛋白の上昇にはほとんど効果を示さないが, HDL分画の回復を中心とする興味ある効果(有効性)があることが判明した.
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