研究概要 |
騒音刺激の中枢神経系への影響を生化学的側面から検討、評価するための手技を確立するために脳内神経伝達物質とされるモノアミンに注目した。つまり騒音の影響をモノアミンの量的変動から評価するために、ラットを用い騒音暴露実験を行った。暴露した騒音の音圧レベルは60dB(A)〜100dB(A)とし、暴露時間は最長で4時間とした。モノアミンとしてはノルエピネフリン(NE),ドーパミン(DA),エピネフリン(E)の3種を測定対象とした。本研究ではまずラット脳内アミンの測定をできるだけ迅速にかつ簡便に行うための基礎的検討を行い良好な成績を得た。新しく購入した電気化学検出器(ECD)を用い、これを高速液体クロマトグラフィーに接続し微量であるアミン類の定量を可能にした。ECDは敏感な検出器であるがその電極間電圧を変化することにより電離される物質が異なる。本研究では上記の3種類のアミンを同時に検出するために、それぞれの物質を回収率等を考慮しできるだけ効率よく抽出、測定する必要がある。そのために測定条件を設定するための基礎的検討を十分に行った。測定全般に渡って用いる水、標準液の溶媒、電極間電圧の設定、検出器のアッテネーションの設定、各物質のピークの確認等種々の条件の組合せを検討し、測定に関してはほぼ満足のいく方法を定めることができた。3種のアミンはNE,E,DAの順に溶出、検出された。回収率は70〜80%の間にあり再現性も良好であることから今回設定した測定条件で十分実験的研究に役立つものと判断した。交通騒音をラットに負荷した場合、最も特徴的な変動を示したNEの結果を述べると、音圧100dB(A)で全脳レベルで減少傾向を示したがこれを脳の部位別に検討すると視床下部で減少傾向を、中脳では有意な減少減少を示した。暴露する騒音の音圧レベルないし暴露時間を変化させた場合の評価にはNEを指標にするのが最も効率的であることを確認した。
|