研究概要 |
稲作を始め農業の機械化は近年著しいものがあり、その歩みは集約的な施設型農業の普及と軌を一にしている。その中で施設園芸は土地生産性のきわめて高い典型的な施設型農業でありながら、機械化に最もなじまないという特異な位置を占めている。私共は、その中でも独特の作業形態をもつイチゴ栽培、その全労働時間の約45%を占める収獲・選果・出荷作業に着目し、熊本県の代表的な生産地Y町において、イチゴ農家9世帯、トマト農家5世帯及び対照のY町役場職員9世帯の夫婦について労働調査を行なった。すなわち、早朝に採血,問診,身体計測及び生理機能の測定を行ない、正午より翌日の正午を1クールとして、疲労自覚症状調査,生活時間調査,連続心拍数測定を行なった。また、エルゴメーターによる運動負荷検査に基づく心拍数-エネルギー消費量関係より労作別及び1日のエネルギー消費量を測定した。男性について1日を5回の測定単位に分け全尿を採取し、ピルビン酸,クレアチニン,電解質を測定し、また、早朝尿を午后の労作時尿についてはカテコールアミン,ビニールマンデン酸,ホモバニール酸を測定した。その結果、収穫期のイチゴ,トマト作業時間は長時間に及ぶが、要素作業の労働負荷は高くないこと、労作時の尿中カテコールアミン排泄量は高値を示し、高い商品価値を伴なうこれらの収穫作業にはメンタルストレスを無視し難しいことが示唆された。また、自覚的には腰痛が高頻度に認められ、地面に結実するイチゴ取扱作業の際の強制姿勢に伴なう静的筋負担の解明が必要だと思われた。また、チェンソーによる伐木造材作業について、男性作業者5名を対象に上記と同様の方法による労働調査を実施した。その結果、機械化されているとはいえ伐木労働エネルギー消費量は4〜5Kcal/分と施設園芸作業の約2倍であり、血清GOT,LDH,尿中カテコールアミン,特に血清CPKに作業前後で有意の変動がみられた。
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