研究概要 |
1物理的な反応による抗変異原性 エームズテストにおける変異原の中で水に難溶なものは希釈溶媒に水を用いると変異原性が高まるというデータを得た。すなわち1-トニトロピレンをジメチルスルホキシドで2mg/m1に溶かし、希釈溶媒として水とジメチルスルホキシドを用いた時の変異原性をTA98,S9mik-プレインキュベーションの系で比較すると水を用いた時の方が約2.5倍高い変異原性を示した。この傾向は水に難溶な他の変異原でも確認された。この現象の機構は細菌の表面に存在する脂質と溶媒の溶解度との分配系数の差によって化学物質の菌体への物理的な吸着力が決定されることによるものと推定している。これは見方を変えれば変異原の溶解度を高める物質は水に難溶な変異原の活性を抑制するということで、新しい型の抗変異原性を提示したと考えている。 2メイラード反応物の助および抗変異原性 アラニンと同モルのグルコースを加え、沸騰水内で10時間加温して作成した既知変異原(AF-2.MNNG)対する作用をE.coli WP2uvfA(trp-)を用いて調べた。その結果低い投与量(10μ1/plate以下)ではAF-2の変異原性を助長し、高い投与量(100μ1/plate以上)ではMNNGの変異原性を抑制した。この様な効果はリジン,アルギニン,アスパラギン酸およびグルタミン酸とグルコースのMaillard反応物にも見られた。Maillard反応物は抗酸化作用をもつものが多く、そのため代謝活性化を阻害し抗変異原性を示すと考えられているが本実験では代謝活性化の系は用いていないので細菌の修復系に作用している可能性が強いと推定し、今後その実証を行う予定である。
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