研究概要 |
ヒト尿中にフコシダーゼ(FUCA1)がグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ(GPT)の多型を効率よく証明する方法を確立するとともに、これらの多型の遺伝子頻度についても調査した。 さらに、成人女子尿を注射して得られたウサギ免疫血清中には、17才から72才の男女尿、2才から87才の女子尿とは反応するが、2才から15才の男子尿とは反応しない抗体が含まれていることを明らかにし、この抗体と反応し、成人男女尿中および少女尿中に共通に見出される抗原をMWG抗原と名づけた。 ついで、ヒト尿中に存在しているペプシノーゲンA(PGA)は硫安分画やDEAEセファロースCL-6B,ハイドロキシアパタイト,エラスチン・セライトおよびゲル濾過などのカラムクロマトグラフィー法を順次利用してSDS・ポリアクリルアミドゲル電気泳動上、均一にまで精製された。この精製PGAをウサギに注射して得られた抗体はペプシノーゲンA(PGA)と特異的に反応するが、ペプシノーゲンC(PGC)などとは全く反応しなかった。ポリアクリルアミドゲル等電点電気泳動後、デュラポア膜上に転写されたヒト尿中のペプシノーゲン(PGA)を上述の抗PGA特異抗体を利用した免疫ブロット法を使用して観察すると、PGAのアイソザイモーゲンは再現性よく検出され、およそ5個の分画に泳動されることが明らかにされた。さらに、PGAには遺伝的多型が存在していることも明らかにできた。 本年度はヒト尿中にFUCA1,GPTおよびPGAの多型を検出する方法を確立し、さらには年令や性別に関連をもつ物質の存在をも明らかにすることができた。これらの成果は法医学領域における個人識別や年令推定の実際に寄与することが大きいものと考えられる。
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