研究概要 |
61年度は、主として等電点電気泳動法の改良を試みた。泳動用ゲルの超薄層化(0.1mm)は、試料量とゲル作成経費の節約ができるのみならず、TF型やGC型のような遺伝マーカーでは非常に鋭敏なパターンが得られた。しかし、血清中の含有量の少ないタンパクの分析にはゲルに充填する試料(血清)量を多くしなければならないこともあり、明瞭なパターンを得るには0.3mm以上の厚さが必要と思われた。泳動像を左右する要素は、ゲルの厚さよりも組成のほうが大きい。市販両性担体では、同じpHレンジの表示であってもメーカーによりかなりの差がみられた(pH5-8の両性担体では、セルバライトはファルマライトやアンフォラインよりもレンジが広くなっている。つまり、ゲル上のバンド間の距離は、セルバライトを用いた場合は短かくなる)。これは両性担体に含まれる分子種の性質と濃度が、メーカーにより異なるためであるが、逆にこの点を利用し、各メーカーの異なるレンジの両性担体を混合することでタンパクの変異性が明確になることがあった(BFサブタイプなど)。次にゲルに数モルの尿素を加えると解像力の向上がみられた。ただしすべての血清タンパクにあてはまるわけではなく、その濃度の選択も必要である。この点は来年度に詳しく検討するが、尿素混合ゲルにて等電点泳動する場合、ゲル冷却温度は8℃以上が好ましいことがわかっている。以上の知見が得られているが、研究報告としては次の事項が発表済あるいは予定されている。1.補体系タンパクBFのサブタイプの検出(62年日法医総会にて発表)、および腎疾患とBFサブタイプの相関(準備中)。2.外国人集団におけるPLG,IF,BF,C7の各型の分布(発表済)。3.補体第7成分のサイレント遺伝子について(学会発表済、論文準備中)。4.鹿児島県在住人のHSGA型の分布(準備中)。
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