研究概要 |
基礎的研究1.腎尿細管ごとの酵素活性を測定するには、微量の資料での酵素活性の測定法の確立が第一歩である。蛍光光度計を用いNa-K-ATPaseの微量測定法を確立し、糸球体は5〜10コ、尿細管はどの部位においても5mmで十分に酵素活性の測定が可能になった。2.まず抗利尿ホルモン(ADH)の酵素活性に与える影響について検討した。ADHを1時間から3時間,24時間作用させても尿細管のNa-K-ATPase活性に変化はみられなかった。投与後3日目になり有意の活性の上昇が認められた。この活性の上昇は、7日間投与したさいの活性値にほぼ近く、3日間の投与により、ほぼ活性の極値に達するものと思われた。この活性は、髄質ヘンレ上行脚,皮質ヘンレ上行脚皮質集合尿細管,髄質集合尿細管において検討されたが、活性の上昇が認められた部位は、皮質集合尿細管だけであった。従ってADHは皮質集合尿細管において長期投与によりNa-K-ATPase活性を上昇させることがわかった。このことはADHは細胞障害のさいに細胞の回復を早める可能性のあるホルモンである可能性が考えられた。3.ラットにおいて虚血性腎不全モデルを作製し、各部位における酵素活性を測定した。いづれの部位においても、明らかなNa-K-ATPase活性の低下が認められた。今後はホルモンを投与した際の酵素活性の回復について検討する。 臨床的研究:急性腎不全において、レニン活性の上昇は認められたが、ACE活性は低下が認められた。一般にレニン活性とACE活性は相関することが多いが、急性腎不全では、この例ではなかった。急性腎不全では、甲状腺ホルモンが低下しており、このことがACE活性の低下に関係しているものと推察された。このことが急性腎不全の機能の保持のための順応なのか否かについては、甲状腺ホルモンの投与などによる今後の検討が必要である。
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