研究概要 |
近年の血液透析療法の進歩と普及はまことにめざましく、10年以上の長期血液透析患者も増加しているが、最近これらの患者に新しい合併症ともいえるアミロイドーシスが発生し、特に手根管症候群や肩・膝の関節症を引き起すことが臨床的に重大な問題となっている。本研究では、長期血液透析に合併するアミロイドーシスの成因を解明する目的で、アミロイド沈着組織の生化学的分析とともにアミロイド蛋白と同定された【β_2】-microglobulinの血中濃度を測定し、以下の結果を得た。1.アミロイド線維蛋白の同定:4症例の長期透析患者の手根管症候群の手術時に腱滑膜に沈着したアミロイド結節を採取し、生化学的にアミロイド線維を抽出した。抽出物をグアニジンとEDTAで可溶化後、HPLCで純化しN末端アミノ酸配列を分析し、その結果【β_2】-microglobulinと同定した。また、このアミロイド線維にはHyaluronic acidも含まれることを明らかにした。一方、12症例において免疫組織化学的にCongo-red陽性部位と【β_2】-microglobulinの局在が一致した。これらの結果により、透析患者にみられるアミロイド蛋白は【β_2】-microglobulinである事実を確実とした。2.透析患者の血中【β_2】-microglobulin濃度:アルブミンより分子量の小さい低分子量蛋白(9種類)を測定した。透析患者の血中リゾチーム,retinol-binding protein,α,-acid glycoprotein濃度は、正常者のそれに比べて2-5倍であるのに対し、【β_2】-microglobulin濃度は40倍以上の著しい蓄積であった。男179名と女104名の計283名の透析患者を対象として、透析期間と血中【β_2】-microglobulin値の関係を検討した。これらの患者の平均血中濃度は40.84±6.68(M±SD)mg/lで、透析期間との間にγ=0.157の相関を認めた。しかしながら、手根管症候群を合併した群と非合併群との間における血中【β_2】-microglobulin値に有意の差はみられなかった。3.骨ν線透亮像:透析患者にみられる骨ν線透亮像はアミロイド沈着によることを明らかにした。しかし、骨透亮像発現と血中の【β_2】-micrglobulin濃度に相関はなかった。
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