研究概要 |
1.イノシトールリン酸分析の為の高速液体クロマトグラフィーの開発細胞内【Ca^(2+)】遊離作用を有する重要な細胞内メッセンジャーであるイノシトール-1,4,5-トリスホスフェイト(I【P_3】)の分離、定量をより精密かつ容易に行う為、新たに高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを開発した。分析カラムとしては、陰イオン交換カラム(TSK-GEL,DEAE-2SW)を、移動相としてリン酸ナトリウムを、検出器として示差屈折計を用いた。本HPLCにおけるイノシトールリン酸分析時間の決定の為、標準物質として、アマルシャム社製イノシトール-1-モノホスフェイト(I【P_1】)、イノシトール-1,4-ビスホスフェイト(I【P_2】)およびI【P_3】を用いた。その結果、本HPLCにより、各種イノシトールリン酸化合物を明確に分離しえ、その分析が短時間(15分以内)かつ簡便に行いうることが明らかとなった。 2.ラット培養メサンギウム細胞におけるイノシトールリン酸代謝に対するアンジオテンシン【II】の影響 メサンギウム(M)細胞におけるアンジオテンシン【II】(A【II】)の細胞内情報伝達機構を解明する為、雄性SDラットより腎糸球体培養によりえられた培養M細胞を材料として、A【II】添加時のイノシトールリン酸代謝の変動を、今回開発したHPLCにより検討した。実験には、継代2代目の培養M細胞を、[【3^H】]イノシトールで48時間前標識して用いた。結果は、(1)A【II】添加によりI【P_3】およびI【P_2】は15秒以内に、I【P_1】は30秒以内に増加した。(2)この増加は、A【II】に対し濃度依存性を示した。(3)このA【II】の効果は、A【II】の受容体培抗薬であるサララシンにより完全に抑制された。以上より、A【II】の細胞内情報伝達機構に、ホスファチジルイノシトール-4,5-ビスホスフェイトのホスホリパーゼCによる分解に始まるホスホイノシチド・サイクルの亢進が関与することが明らかとなった。
|