研究概要 |
慢性糸球体腎炎の発症・進展の鍵を握るのは, メサンギウム(M)細胞の増殖であるが, 一般に細胞増殖には, Camessengar systemいわゆるphospho inositice cycle(PIcycle)が深く関わっていると考えられる. そこで本研究では, PIcycleの重要な情報伝達物質であるinositol phosphates(IPs)のM細胞における動態について検討を行った. IPsの分析については, 従来の方法は, 分解能が不十分で, 操作が繁雑である等の難点がある為, 今回新たにHPLC法を開発した. 本方法は, 高い分解能と簡便さを備えており, かつinositol moncplosphate(IP_1)inositol blsphosphate(IP_2)をはじめ細胞内貯蔵部位からのCa^<2+>遊離作用を有するinositol1,4,5-trisphosphate(I(1,4,5)P3)そのリン酸代物で細胞外からのCa^<2+>流入を来たす可能性があるinositol1,3,4,5-telrakisphosphnte(I(1,3,4,5)P_4), その脱リン酸化物であるinositol1,3,4-trlsphosphate(I(1,3,4)P_3)の分析も可能である. 材料としては, ラット培養M細胞を用い, agonistとして, M細胞収縮のみならず増殖活性をも有するangiotensinII(AII)を用いた. その結果, AII添加により5秒以内にIP_2, I(1,4,5)P_3, I(1,3,4,5)P_4, の増加が認められた. IP_2はその後も徐々に増加し, I(1,4,5)P_3は10秒で最大となり急速にControl levelに減少, I(1,3,4,5)P_4は10秒で最大に達し, その後若干低下するが, なお高値を示した. 一方IP_1, I(1,3,4)P_3はそれぞれ30秒, 10秒より徐々に増加した. このAIIによる, IP_1, IP_2I(1,4,5)P_3の増加は, AIIに対し濃度依存性を示し, かつ, AIIの受容体での拮抗葉であるsaralasinにより完全に抑制された. 以上より, AIIは受容体結合後, 細胞膜phosphaligaseCの活性化を介し, inositol tris-and tetrakisphospshate pathwayを含む, IPs代謝亢進を引き起こすことが明らかとなり, M細胞増殖における本代謝系の肝要が示唆された.
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