研究概要 |
血管炎の発症機序の一つとして、自己抗体の関与が推測されているが末だ明確ではない。私共は、本症と抗リン脂質抗体との関連性を追求して来たが、本年度は、血管炎患者血清中の抗phosphatidyl choline抗体の特異性に関して、検討し以下の結果を得た。(1)抗phosphatidyl choline抗体(PC-Ab)の測定にはPCを抗原とするELISAを用いた。PC-Aσは、健常人、脳血管障害患では上昇例はなかった。SLE,RA,PSSでは上昇は軽度であったが、血管炎群では最もPC-Abの上昇が著明であった。即ち、PC-Abは多発性動脈炎(PN)で平均23.4μg/ml(正常値0.4±0.4)で7例中6例が陽性、大動脈炎では平均2.3μg/mlで、13例が陽性、リウマチ性多発筋痛症(PMR)、Wegener肉芽腫症、その他の血管炎では、いずれもPC-Abは低値で、陽性率も低くかった。〓氏反応陽性(STS)及びBFP-STSはPNの1例にのみ認めた。STSは、Candiohpn;PCを抗原として含む反応であるが、PC-AbとSTSとには関連性はなかった。PC-Ab価は、P,AO例ともに非活動期には正常範囲に低下し、活動性とよく相関した。(2)抗PC活性は、PC抗原にて抑制されること、血清より〓〓〓のF【(ab')_2】に精製しても活性が存在することより〓〓〓抗体であることを明らかにした。(3)PC-Abは、他のphospholipidとはphosphatidyl ethanolamineと軽度の交差反応性を示した。(4)抑制試験と、抗原のphospholipase Dによる酵素処理の結果、PC-Abはphospholipidのcholine-phosphate部分を認識する抗体であることが推測された。(5)以上より、本抗体は、血管炎患者(PN,AO)血清中に高率に存在し、phosphatidyl cholineの頭部と反応し、血管内皮細胞を障害する可能性も推測された。
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