研究概要 |
人工臓器・血漿交換・カテーテル類に用いられる人工材料が、血中の微量活性物質に変化を与え、アナフィラトキシン・プロスタグランディンを増加させることを従来より明らかにしてもきたが、それがどのような臨床的意義をもつかについてはまだ明らかにされていない。本年度の研究では、 1.臨床的意義に関する研究、2.補体活性化に対する生体側の適応、3.他の活性物質であるロイコトリエンの変化の解明、の3点について検討した。 1.臨床的意義.透析患者を2群に分け、1群には補体活性化作用のない透析器(A)、補体活性化作用も持つ透析器(B)を4週毎にA-B-Aの順で使用、他の1群にはB-A-Bの順で使用、計12週のdouble blind cross over試験を施行した。透析困難症出現頻度、活性化補体、リンパ球サブセット、リンパ球幼若化反応、β2-micro-globulinの推移を観察したが、A,B間でこれらの指標に差異を認めなかった。補体活性化は中期的には生体機能にあまり影響を与えないものと考えられる。 2.補体活性化に対する生体側の適応、透析の度毎におこる補体活性化に対して、生体がいかに適応しているかを検討するため、モノクロナル抗体を用いてリンパ球の表面補体レセプターを解析した。レセプター陽性細胞の比率は血液透析によって大きく変動し、CRi,【CR_3】陽性細胞は増加する。リンパ球が補体活性化に対して抑制的に作用している可能性が示唆された。 3.ロイコトリエン.合成材料との接触によって、プロスタグランディンが増加することから、ロイコトリエンの増加が予想される。本年度の研究によりその増加が立証された。またその増加が、膜素材によって差異のあること、血液潅流法では増加の程度が大であり、血漿交換法では血中増加は小であるが濾液中の濃度が大であることを認めた。さらに白血球を取り出し白血球ロイコトリエン放出能を検討すると、放出能の低下が認められ、低下度はセルロース系で大、合成系で軽度であった。
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