研究概要 |
マウス腹腔内に、ヒト顆粒球を注入したのち、脾細胞を取り出して腫瘍細胞と反応させ融合細胞を作製した。その中から螢光抗体法を用いて顆粒球に特異的な抗体を産生する細胞を選び出し、大量のモノクローナルな抗ヒト顆粒球抗体を得た。そして各種モノクローナル抗体の性状(分子量、L鎖の種類免疫グロブリンのサブクラス、補体結合性)を調べた。百種類以上のモノクローナル抗体について、顆粒球機能(遊走能、活性酸素産能、ライソゾーム酵素放出能、発熱、化学発光等)に与える影響について調べた。その結果、遊走能のみを抑える抗体(TM316)や、遊走能および化学発光を抑制する抗体(TM2)が認められた。またFcレセプターや補体成分の【C_3】レセプターに対するモノクローナル抗体も明らかになった。Western Blotting法により、TM316が認識する顆粒球表面抗原の分子量は約78,000で、顆粒球刺激物質である【Ca^(++)】-イオノフォアA23187や、合成ペプチドであるフォルミルロイシルフェニルアラニン(FMLP)を処理すると、顆粒球表面のTM316対応抗原量の増加がセルソーター解析により認められた。また、モノクローナル抗体TM2が認識する表面抗原は約120,000〜130,000の糖蛋白で、やはり顆粒球刺激物質であるコンカナバリンA処理により、表面抗原量の増加が認められた。これら顆粒球の刺激物質は、近年細胞内の刺激伝達経路として注目を集めているホスホリン脂質の代謝を促進させ、その代謝産物は細胞内【Ca^(++)】上昇や、プロテインキナーゼなどを活性化させると考えられている。細胞内【Ca^(++)】動員のブロッカー(TMB-8)や、プロテインキナーゼCの阻害剤(H-7)や【Ca^(++)】-カルモデュリンの阻害剤(W-7)を用いた実験では、阻害剤の濃度に依存して抗原の発現量に減少が認められた。今後は、さらに詳しい発現機構の解析及び、抗原の細胞内貯蔵部位の確認を行なう。
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