研究概要 |
IgA腎症の進展に関与する免疫因子と非免疫因子を明らかにし、本症の進展機序の解析を試みた。対象は30才代発症のIgA腎症93例で、若年発症群を対照とした。その結果、以下の成績が得られた。1.本症は光顕的には発症初期は巣状病変を主体としているが、発症年齢の増加や経過した症例にび漫性病変の増加が認められた。糸球体の巣状硬化病変と小半月体形成像は本症の形態上の特徴であり、対象例では硬化像を65%以上に、小半月体形成像も40%に認められた。電顕的には、光顕的に軽症糸球体障害例でも糸球体基底膜病変(菲薄化,2層化,内皮下腔拡大あるいは部分的な基底膜隔解像)が認められた。基底膜病変の強い例には小半月体形成を伴う頻度が高く、高度血尿や高血圧を伴うもの、腎機能低下例が多かった。このような形態学的検索から、本症の進展には糸球体基底膜病変、管外性病変及び硬化病変の増加が悪化因子と考えられ、非免疫因子の関与が示唆された。2.本症の発症・進展要因である免疫因子については、主体をなすIgAの腎炎惹起性の組成をもつ抗体がメサンギウムを反応の場として障害を起すと考えられる。沈着しているIgAの性状はIg【A_1】であることが証明されたが、2量体IgAを証明するJ鎖については明らかにできなかった。また血中IgAをゲルろ過法で分子量別に検索したところ、分子量50万〜17万の高分子量IgAが優位に増加していた。血中免疫複合物は抗【C_3】EIA法によってIgACICを測定し68%の陽性率が得られた。しかし、抗OKモノクロナール抗体による検索では明らかにT細胞機能異常を証明できなかった。本症にみられる高IgA血症は健常者に比し優位に高く年齢で増加していた。3.本症の進展には、以上のような免疫因子と非免疫因子の関与が考えられ、本症の1/3に明らかな進行が認められた。1/血清クレアチニンの測定は進行度をみる指標として有用であった。
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