研究概要 |
胆汁中胆汁酸ミセル構造の概念は主として試験管内モデルを利用して議論されているが、生体内における実際の構造が理論通りか否かは保証がない。今回我々は、限外濾過法を利用して、ヒト胆汁ないし人工モデル胆汁を分析し、ミセル分子サイズの分布様相と、従来報告に乏しい低分子量ミセルの機能について検討を加えた。 1.胆汁中胆汁酸ミセルの生体内存在様相に関する検討 分析に利用した限外濾過法は、正確度や簡便性の上で満足すべきものであり、本研究の目的に適するものであった。ヒト胆嚢胆汁では胆汁酸の約60%が分子量1万以上の大分子量ミセルの構成分であるが、約20%は胆汁酸の二量体ないし単分子体として混在し、その主要構成胆汁酸はコール酸であった。次いで各種人工モデル胆汁を作製してミセル分子サイズを規定する胆汁酸化学構造の特徴を検討した。その結果、ミセル分子サイズは胆汁酸ステロイド骨格の水酸基数と配位、側鎮抱合アミノ酸の種類により影響され、分子量1万以上の大分子ミセルは水酸基数が3個より2個、β位よりα位で、抱合アミノ酸のカルボキシル基は2個より1個の場合に形成されやすいことを明らかにした。 2.低分子量サイズミセルの機能に関する検討 胆汁中カルシウムは胆汁酸ミセルと結合し、溶存する。現在胆汁中胆汁酸濃度,ミセル構成胆汁酸の種類,ミセル分子サイズなどの諸因子とカルシウム結合様相について検討を進めている。 3.低分子量サイズミセルと胆道疾患の研究 胆石症に胆汁酸療法を行った場合、CDCA投与胆汁では大分子ミセル分画が増加し、二量体ないし単分子体分画は有意に減少するが、UDCA投与胆汁ではこの逆現象が認められた。
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