研究概要 |
(1)目的・胆汁酸は閉鎖的な腸肝循環を行ない、腸管内で脱抱合、7α脱水酸化をうける。したがって血中胆汁酸の種類の測定によって腸管内の病態、ことに腸内細菌過剰発育を知ることが出来ると考えた。一方、これと従来、臨床的に鑑別不能であった吸収不良症候群も経口的胆汁酸負荷により、血中胆汁酸クリアランス曲線の平低化を知れば診断できると考えた。したがってこの両方法を組合せれば、両病態を鑑別できる診断法が確立できるものと考えた。 (2)対象と方法:健常人5名にUrsodeoxy cholic acid(UDCA)を300〜1000mg経口投与し、血中のArea Under Curue(AUC)を測定したところ△AUCは投与量と相関した。また諸種の腸疾患患者の血中胆汁酸をHPLCにて測定した。 (3)成積:UDCA服用量とAUCは0〜900mgにおいてγ=0.97(P<0.01)の相関を示した。またこの経口胆汁酸負荷試験と血清胆汁酸分画測定を併用したところ、健常者クリアランスは△TBA>10μMであり、遊離型(F)29.3%、deoxycholic acid(DC)11%であった。諸種腸疾患(広汎回腸切除,回盲部疾患,短腸症候群)14例について経口負荷試験と血清胆汁酸分画を併用したところ4型に分類できた。すなわち(1)両試験とも正常なもの (2) 負荷試験低値,分画正常,すなわち吸収不良だが、腸内細菌過剰発育のないもの。(3)負荷試験正常 分画でFまたはDC増加、すなわち、吸収正常,細菌過剰発育群,(4)両試験異常,すなわち吸水不良と細菌過剰発育両者存在するもの。以上4型である。 以上より経口UDCA負荷試験により吸収不良症候群を、また血清胆汁酸分画測定により細菌過剰症候群を診断できると考えられ、両方法の併用によって新らしい診断法が確立できた。
|