研究概要 |
In situ hybridization法を用いて、小さな肝癌生検材料でras及びmycの発癌遺伝子の同定を行うため、最初に予備実験として再生肝における発癌遺伝子の発現について検索した。Spragne Dawleyラットの2/3肝部分切除を行い、12,24,36,48,72,96時間後に屠殺し、又controlとして肝部分切除ラット及びsham opeラットを屠殺し用いた。In situ hybridizationはC-myc及びH-rasをnick translation法にて【^3H】を標識し、これらをプローベとして行った。各細胞あたりの粒子数を算出し、sham opeラット肝を対比し、その推移を算定した。C-mycの発現は肝切除後24時間目をピークとし、切除時の23.0%の増加を示した。H-rasの発現は36時間目にピークを示し、197%の増加を示した。この結果より、In situ hybridization法によっても発癌遺伝子の発現の検索は可能となった。次に小さな肝癌5症例11検体,対象として剖検で得られた大きな肝癌7症例14検体(癌部及び非癌部各1検体)を検索した。用いたプローブはC-myc,Hlk-rasで前者はmyc geneのexon-3を制限酵素で切った1.6kbのDNAであり、後者はレトロウイルス由来のras gene(H及びK)の600bpのDNA断片を用いた。剖検7例の癌、非癌部に有意のgrain数増加は見られなかった。生検例中明らかな癌3例中2例に有意にras遺伝子群のgrain数増加(3-6倍)をみた。しかしHyperplastic noduleの2例及び非小病変部にはgrain数の増加は見られなかった。従来の形態学的診断法に加えIn situ hybridization法を用いることで小さな生検材料につき、発癌遺伝子を含む各種蛋白発現が検索可能となり、肝癌初期病態解明に役立つと考えられる。
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